2024年10月7日週:努力とは・・気持ち?

みなさんこんにちは。先日、9月末にNHKの朝の連続ドラマ「虎に翼」が最終回を迎えました。主人公の佐田寅子(さだともこ お父さんや親しい人からはトラちゃんと呼ばれていた・・葛飾柴又の寅さんと同じトラさん?)のモデルになった方は、三淵嘉子さんという方です。この方は女性初の弁護士で、後には女性初の裁判官、女性初の裁判所長(家庭裁判所)になった方です。この方はとても努力家で当時は女性が法律を学ぶことはタブーとされていた時代だったのですが、そこに切り込んでいって不断の努力を重ね、もちろん周囲の協力もあってのことだとは思いますが、女性初の弁護士、裁判官、裁判長まで上り詰められました。簡単に「不断の努力」と書きましたが、そこには、私のような者が語るには烏滸(おこ)がましい・・・などという言葉でも言い尽くせないくらい物凄い努力があったことだと思います。泣きたいことも辛いことも乗り越えて、努力に努力を重ねて前に突き進んでいって、ついには自身の目標を達成してしまう。凄いですよね。
 ということで今回は、私の知り合いで、三淵嘉子さんに勝るとも劣らない・・と書くとまた問題が起こってはいけませんので・・三淵嘉子さんと同じように努力を重ねて目標達成された方の事を書きたいと思います。

 その方は、Iさんという年齢はもう少しで70歳になる普通のおじさんです。Iさんは野球が大好きだったそうで、観戦だけでなく、自身も草野球を楽しんでいたそうです。その中で、地域にソフトボールリーグを作ろうということになったそうです。野球ではハードルが高い、ソフトボールのほうが素人でも取り組みやすいということなのでしょうか、野球ではなくソフトボールリーグだそうです。自身も監督をする傍ら野手、投手、キャッチャーと何でもできる万能プレーヤーでした。私も縁あってそのIさん率いるチームで一緒にプレーしていました。
 Iさんは野球の経験はあったようですが、ソフトボールの経験、特にピッチャーは経験がなかったらしく、あの大きく手をグルんと回してから球を投げだす投げ方、ウインドミル投法というそうですが、それを習得するために誰もいないグランドの壁に向かって何時間も練習をしたそうです。結果、当時そのリーグでは誰もできなかったウインドミル投法でバッターをぶった切りにしたそうです。
 Iさんは、口は決して良いとは言えませんが、人に対する思いやりがとても強く、そして責任感の強い人でした。ある暑い夏の土曜日のことです。その日私は、夏休み中の子供たちが行うキャンプの出しものであるお化け屋敷を作るための手伝いをしていました。夕方から始まるソフトボールのナイターに選手として出場することもあり、その試合に間に合わせるため午前中から近所の小学校で汗をダラダラ流しながら作業をしていました。試合には間に合ったのですが、朝からの作業の疲れでしょうか、水分不足でしょうか、私は試合の途中に熱中症と思われる症状で倒れてしまいました。すると、Iさんは試合もほっぽり出して、監督である自らが自身の車で病院に連れて行ってくれました。車中で横になりながら「すいません・・」という私に、「心配せんでいい」とぶっきらぼうに言いながら車を走らせていました。とても嬉しく、感謝の気持ちが湧き上がってきました。

 それから何年か経ってから「Iさんが倒れたそうだ」と聞きました。当時私は単身赴任のため鳥取から遠く東京に住んでいました。そのため、Iさんが倒れたことを聞いたのは、Iさんが一命をとりとめたけれども生活に支障のある状態で退院した後でした。スポーツが好きで、自らもソフトボールを楽しんでいたIさんでしたが、例え片側でも、手足がマヒした状態ではスポーツどころか日常生活もままならないと思います。そのため私は、「お気の毒に」と心の中で思っていました。
 それから何か月か経ってからのことです。見慣れないおじいさんが自転車を押しながら歩いていました。「押さないで乗ればいいのに」とそのおじいさんのほうを見ると、なんと、「おじいさん」ではなく私の知っているIさんでした。この近所では70歳はまだまだ若いですからおじいさんとは言いません。ですが、病気のせいでしょうか。小さくなって、弱々しくなったIさんはおじいさんに見えました。でも、体にマヒが残っている状態と聞いていたのですが、Iさんが自身で自転車を押して歩いていました。リハビリの一環で自身が自発的に始めたのではないかと思います。下を向きながら、とてもしんどそうに、でも一生懸命押していました。鬼気迫るというのとは少し違いますが、目線を下にして道路の1点をみつめて黙々と押していました。その姿に私は声をかけることができませんでした。
 するとまた何か月かして、今度は自転車に乗っているIさんを見かけました。押していたころのIさんとは見違えるほど元気な姿でした。まだ、スイスイとはいきませんが、それでも普通に自転車に乗れていました。その時はさすがに私も嬉しくなって「おーい、Iさん」と声を掛けました。するとIさん、私のところまで自転車で来てくれて会話・・というほどのものではないですが・・会話をしました。「お久しぶりです」という私に「おー、○▽◇?×」とろれつの回らない舌で話しかけてくれます。私も一生懸命理解しようとしましたが、なかなかわかりません。するとIさん、いつもの癖で笑いながら手を振りながら「もういいよ(心の声)」と。凄いなーと思いました。ほんの何か月か前は自転車を押すだけだったのが、足でペダルをこいで、体でバランスを取りながら、手でハンドルを操作して自転車に乗れているのです。Iさん凄いです。
 それからまた何か月かして、今度は歩いているIさんと会いました。自転車ではなく歩いているIさんをみて少し驚きました、自転車のほうが楽なのにと。ただ、よく考えてみると、自転車と歩くのとどちらが難しいのかはわかりませんが、少なくとも歩くほうが体力を必要としますし、生活をしていくうえで体力は絶対に必要です。ひょっとしてお医者さんの指導の下やっているのかもしれませんが、それでもその回復の速さには驚きました。「お久しぶりです。酒は飲んでますか?」と冗談交じりで聞く私に「いや、飲んどらん。3合までは飲んでいいと言われとるけど飲んどらん(鳥取弁)」と、多少の聞き取りにくさはありましたが、会話もしっかりと出来ています。凄いですIさん。本当に凄いです。

 私ちょっと考えてみました、努力って何だろうと。Iさんは努力に努力を重ねて動きがとても不自由な状態、会話もできない状態から脱しました・・もちろん、まだIさんの目標は高いところにあると思いますし、まだまだ努力の途中かもしれません・・。
 たぶんIさんの気持ちが強くなければこんなに短期間でこんなに早く回復しなかったのではないかと思います。よく、「もういーや」とか「もうやーめた」という言葉を聞きますが、これもやっぱり、そのことというかその何かへの気持ちがなくなってしまい、「もういーや」とか「もうやーめた」になるのではないかと思います。努力というのは気持ちなのではないかと思います。気持ちの強さなのではないかと思います。つまり、人は誰でも気持ちさえあれば努力できる、努力し続けられるということなのではないかと思います。Iさんが特別な人のように書きましたが、Iさんは早く回復して元に戻りたいという気持ちをずっと持ち続け努力してきたのだと思います。そして今も努力しているのだと思います。
 気持ちさえあれば、努力って誰にでもできるんだと思います。気持ちです、気持ち。

 はい、今回はIさんの姿を通じて気持ちを持つことの大切さを学ばせていただきました。Iさんありがとうございます。これからも頑張ってください。

 それでは次回も乞うご期待です。さようなら。
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