みなさんこんにちは。
5月が終わり6月がやってきました…というのは先週も書いたのですが。5月というのは底引き網漁のシーズン最後の月で漁師さんたちも、私たち魚屋も最後の追い込みという感じで、とにかく我武者羅に魚と向かい合う月でした。特に漁師さんは寝ないで操業を続ける日々だったそうです。5月の終わりに娘の同級生の漁師さんと立ち話をしたら、「おっちゃん、俺この4日間で10時間寝ていないわ」と真っ赤な眼をして言っていました。本当にご苦労様です。冬場ほどではありませんが、それでも風と波という自然と戦いながら、船の上で立っているだけでも大変なのに、網を曳き魚を揚げて魚を選別して箱詰めしてと、そんな作業を寝ないで続けるわけですから。本当に大変だと思います。
そんな漁師さんですが、やはり体力勝負のところもあるそうで、年齢が65歳を超えてくると結構きつくなってくるそうです。ですので70歳くらいにはみなさん後進に道を譲って行くそうです。
中学校の先輩で何年も船頭船長を務めた漁師さんが言っていました。その方はもう少しで「船を降りる(現役を引退する)」そうです。次の船長は既に決めてあるそうで、何年も前から付きっきりで操船方法や漁場について指導してきたそうです。特に大波の時や大風の時に漁港への出入りはとても難しいそうでその時の操船方法は慎重に指導しているということでした。やはり、人はすぐには育たないですから、時間をかけてじっくり慎重にやっていく必要があるんですね。
ということで今回は、このベテラン漁師さんの話ではなく知り合いから聞いた話で後継者育成について考えさせられましたのでそのことを書きたいと思います。
■ 旧知から聞いた、空港で働く娘さんの話
先日、旧知の知り合いと久しぶりに顔を合わせました。夕方の喫茶店で、コーヒーの湯気がゆらゆらと立ちのぼるのを眺めながら、「いやぁ、うちの娘がね…」と、近況を聞かせてくれました。
その娘さんは、空港でグランドスタッフとして長年働いているそうです。あの慌ただしい空港の空気の中で、なぜか彼女の周りだけは風が少しゆっくり流れているような、そんな落ち着きがあるらしいのです。先輩も後輩も上司も、みんな彼女を頼りにしているということですから、相当な存在感ですね。
「空港ってのはね、毎日が事件簿みたいなもんでね。天候で遅れるわ、乗客は走るわ、荷物は迷子になるわで、まあ大変なんだ」と。聞いているだけで、私の脳内には“空港版・水戸黄門”みたいな彼女の姿が浮かんできました。困った人が現れると、すっと近づいて「どうされました?」と解決していく。そんなイメージです。
そんな彼女が、二人目の妊娠・出産で長期休暇に入ることになったそうなんです。「よかったなぁ」と私も思わず頷いたんですが、そのあとに続いた知り合いの言葉が、ちょっと。え!?でした。「上司から、休暇の開始をあと1か月延ばせないかって言われたらしいんだよ」。
理由は、まあ予想通りでした。彼女ほど動ける後輩が育っていないからということです。
私は心の中で「いやいや、それは違うでしょう」とツッコミを入れました。これは彼女の問題じゃなくて組織の問題だと思うんです。
■ 優秀な人が抜けると困る組織は、育成を怠ってきた組織である
空港の現場は、毎日が“予期せぬ出来事の見本市”みたいなものだそうで、天候、機材、乗客の事情…。その中で、瞬時に判断し、周囲と連携し、トラブルを最小限に抑える力は、簡単に身につくものではないと思います。
だからこそ、優秀な人に仕事が集中しやすいんでしょうね。そして優秀な人ほど「自分がやったほうが早い」と思ってしまうと思うのです。その結果、後輩が育つ機会がどんどん奪われていってしまう。でも別の見方でいくと、これは“優秀な人がいるから起きる問題”ではない。優秀な人に頼りきってきた組織の構造的な問題だということもあると思うんです。
魚屋さんでも空港でも、人に依存するのではなく、仕組みに依存する組織をつくることが大事だ。魚屋さんで言えば、「三枚おろしはあの人しかできない」、「値決めは社長じゃないと無理」、なんて状態は、もうこれは“ヤバい”ですよね。
■ 人材育成は“時間ができたらやるもの”ではない
後輩が育っていないのは、後輩の責任ではないと思うんです。会社が育成を「余裕があるときにやるもの」として扱ってきた結果だからだと思うんです。
経営の世界では、育成を後回しにする組織は、必ずどこかでつまずきます。本来、人材育成は日々の業務の中に組み込むものだと思います。「役割を分散し、属人化を防ぐ」。「判断基準を共有し、誰でも同じ品質で動けるようにする」。こうした“仕組みづくり”とセットで進めるべきものだと思うんです。
「彼女がいないと回らない」という状態は、経営者から見れば、これはやっぱり“ヤバい”ですね。
■ 人の人生の節目に寄り添える組織こそ強い
妊娠・出産、病気、介護、家族の事情と、人生には、どうしても仕事より優先しなければならない時期があります。そして、その節目は突然やってきます。「来月から母の介護が必要になって…」、「子どもが入院してしまって…」、「自分の体調が思わしくなくて…」。どれも、誰にでも起こり得ることです。そんなときに、「あなたがいないと困る」、「もう少しだけ頑張れないか」、と引き止める組織は、結局のところ“人”ではなく“都合”を優先していると思うんです。
逆に、「大丈夫。任せておきなさい」、「ゆっくり戻ってきてくれればいい」、と言える組織は、人の人生を尊重していますよね。そして不思議なことに、人の人生に寄り添える組織ほど、仕事の質も、組織の強さも上がっていくのではないかと思います。
なぜか。・・・それは、安心して働ける環境には、自然と“育ち”が生まれるからだと思います。人は安心しているときにこそ、新しいことに挑戦できるし、周りを助ける余裕も生まれますよね。
「いつ休んでも迷惑がかかる」、「自分が抜けたら現場が止まる」、そんな不安の中では、人は育たないですし、組織も強くならないですよね。
人生の節目に寄り添える組織とは、人を大切にする覚悟を持った組織であり、その覚悟こそが、長く続く力になります。例えば、「明日、子どもの運動会なんです」と言われたときに、「おお、行ってこい行ってこい。カメラも忘れるなよ」と言えるかどうかだと思います。その一言が、組織の未来を変えることだってあるかもしれません。
■ 結び:後継者育成は、未来への責任
後継者育成とは、単に技術や知識を伝えることだけではないのではないかと思います。
・判断の軸
・現場の空気の読み方
・人との距離感
・トラブル時の優先順位
こうした“見えない部分”を、日々の中で少しずつ伝えていくこともあると思うんです。そしてそれって、必要になってから始めても間に合わないと思います。
私、知り合いの話を聞きながら思いました。後継者育成というのは、未来に対して「この組織を続けていく」という宣言そのものなのではないかと。「未来に責任を持つ覚悟があるか」。「人を育てる時間を惜しまないか」。「誰かが休むときに、堂々と『任せておけ』と言えるか」。
その積み重ねが、組織の寿命を決めると言ってもよいかもしれません。そしてその責任は、現場の誰か一人に背負わせるものではなく、組織全体で担うべきものだと思うんです。
後継者育成とは、未来への投資であり、未来への祈りであり、未来への責任だと思います。
はい、今回は知合いに聞いた話で考えさせられましたのでそのことについて書いてみました。後継者育成というのは大切なものですね。それでは次回も乞うご期待です。さようなら。