2026年8月17日週:機械の修理も人生もおんなじだと思った話

 みなさんこんにちは。
 毎年この時期になると、私は父が亡くなった日の不思議な出来事を思い出します。単身赴任先の大阪へ向かう途中、車内で突然蜂に刺されました。高校時代に蜂に刺された痛みやアナフィラキシーの恐怖が蘇り、引き返すべきか迷いながらも大阪へ向かいました。ところがその約1時間後、家内から「お父さんの容態が急変した」と連絡が入り、慌てて鳥取へ戻る途中で「駄目だった」と知らされました。刺された足は腫れも痛みもなく、まるで“知らせるためだけに刺した”ようでした。虫の知らせとは本来“三尸”という第六感のことだそうですが、あの日は本物の虫が知らせに来たのかもしれません。
 …と、これだけで終わっても良さそうですが、これだと毎週コラムを楽しみにしてくれているみなさんに申し訳ありませんので、やっぱり今回も長めに(?)お届けします(笑)

 毎年この時期…ではなくて、お米を作っていると田植えが終わってから稲刈りまで田んぼの畦刈り(あぜがり。畦に生えた雑草を刈り取ること)は欠かせません。で、毎年頼りにしているのが、ホンダの草刈り機 UMK425、もう十五年以上付き合っている相棒です。
 この草刈り機、実は私の父親が使っていたものでこれを父親が亡くなった10年程前に引き継ぎました。引き継いだ当初は「さすがホンダ!」という感じで、エンジンのかかりも良く、燃費も良く、音もそこそこ静かでなかなか優秀でした。ところが年月というのは残酷なもので、最近はだんだんと“おじいちゃん草刈り機”になってきていました。それでもだましだまし使っていたのですが、今年に入ってからどうも様子がおかしいんです。エンジンはかかるにはかかるんです。チョークを引いてスターターロープをキュッキュッと引っ張ると、ブルルンと目を覚まします。ここまではいいんです。ところが、そこから五分ほど草を刈っていると、突然「ストン」とエンジンが止まってしまうのです。まるで「もう疲れたから休ませてくれ」と言っているかのように。
 最初は「まあ、たまたまだろう」と思っていました。ところが、何度やっても五分で止まる。五分草刈り機。そうなると、さすがに「これは何かがおかしい」と思わざるを得ません。メーカーに修理を出すか、それとも自分で何とかしてみるか。ここで私はしばし悩みました。メーカー修理に出せば、きっときれいに直してくれるでしょう。でも、十五年以上使っている草刈り機に、そこまでお金をかけるのかどうか。しかも、私は昔から“機械いじり”が嫌いではない。むしろ好きな方です。で、結局いつものように、AIの相棒に相談しながら、自分で修理してみることにしました。
 まず疑ったのは、燃料フィルタです。ガソリンを吸い上げる途中にある、あの小さなフィルタ。長年使っていれば、ゴミやらサビやらで詰まっても不思議ではありません。タンクからホースを外して、フィルタを取り出してみると、見た目にはそれほど汚れているようには見えません。でも、こういうのは見た目ではわからないことが多いんです。そこで、とりあえずエアで「ブシューッ」と吹いてみました。コンプレッサーの風で、詰まりをぶっ飛ばしてやろうということです。吹き終わって、もう一度組み立ててエンジンをかけてみると、ちゃんとかかります。アイドリングも安定しています。「お、これは直ったかもしれない」と思いました。そこで、早速草刈り機を軽トラに積んで田んぼに行きました。
 畦刈りを始めて五分。…はい、止まりました。「ストン」と、何事もなかったかのようにエンジンが沈黙します。草刈り機を見つめながら、私は心の中でつぶやきました。「なんで、わざわざ田んぼまで持って来る必要があるんだろう…」。庭で十分試せるのに、なぜ毎回本番で確認したがるのか。自分でもよくわかりません。
 仕方がないので、次はホンダ純正の燃料フィルタをネットで注文しました。やはり、純正という言葉には弱いですね。「これを付ければ、きっと大丈夫だろう」と、半分おまじないのような気持ちで待ちました。数日後、届いたフィルタを取り付けて、またエンジンをかけてみると、やはりちゃんとかかります。アイドリングも安定しています。「今度こそは」と思いました。
 で、懲りずに田んぼへ。畦刈りを始めて五分。はい、また止まりました。ここまで来ると、もはや「五分で止まること」がこの草刈り機の仕様なのではないかと錯覚しそうになります。いや、そんな仕様はいらないのですが…。
 次に疑ったのは、点火プラグです。これは比較的簡単に交換できますし、値段もそれほど高くない。プラグを新品に交換して、エンジンをかけてみると、これもまた元気よくかかんです。「よし、今度こそ!」と、三度目の田んぼ行きです。結果は、やっぱり五分でアウト。私は草刈り機を抱えながら、また自分に問いかけました。「…なんで、毎回田んぼまで持って行って試すんだろう?」庭で十分じゃないか、と。でも、なぜか“本番で試したい”という気持ちが勝ってしまうのです。
 ここまで燃料フィルタと点火プラグを疑って、どちらもハズレ。残る候補は、キャブレータかイグニッションコイルです。キャブレータは、アッシー交換(バラバラ部品ではなくキャブレータ全体)で五千円から六千円くらい。イグニッションコイルも、純正品なら同じくらいの値段です。
十五年以上使っている草刈り機の価値を考えると、ここに五千円をかけるのかどうか、またまた悩みます。新品を買うほどではないけれど、修理にそこまで投資するのもどうか…。頭の中で、電卓を叩くような感覚がぐるぐる回ります。
 そんな時、私の中の“ケチの虫”、もとい、倹約家の私が顔を出します。私は昔から、「正当な価値のないものにそれ以上の対価を払うのは無駄なことだ」と思っています。つまり無駄なお金を使うのが嫌いです。で、ネットをあれこれ見ていたら、イグニッションコイルの“バッタもん”が目に飛び込んできました。なんと1500円。純正の三分の一以下です。「これだ!」と思いました。もちろん、バッタもんですから、品質は保証されていません。付けてみてダメかもしれない。でも、1500円なら、ダメでも諦めがつく。そういう値段です。私は迷うことなく、ポチッと注文ボタンを押しました…倹約とはちょっと違うような…まあいいや。
 翌日、そのコイルが届きました。箱を開けて、現物を手に取った瞬間の気持ちは、なかなか言葉にしづらいものがあります。これで本当に直るんだろうか…」という不安と、「もしかしたら、これで一発で直るかもしれない」という期待と、その両方が胸の中で同時にうごめいている感じです。わくわくとドキドキが、半分ずつ。
 早速、古いコイルを外して、新しいコイルを取り付けました。ボルトを締めて、配線をつなぎ直して、プラグキャップを戻して…。一通り作業が終わったところで、いよいよエンジン始動の瞬間です。スターターロープを引っ張ると、ブルルンとエンジンがかかりました。「おお、かかった!」。とりあえず、ここまでは合格です。でも、私の中にはまだ疑いが残っています。「どうせ、また五分で止まるんじゃないか…」という、あの嫌な予感です。
 そこで、また田んぼです。もうここまで来たら、田んぼで試さないと気が済みません。畦刈りを始めて、十分。まだ動いています。二十分。まだ動いています。三十分。さすがに、そろそろ止まるだろうと思っていたら、まだ動いています。四十分ほど経ったところで、突然エンジンが止まりました。「やっぱり駄目だったか…」私は一瞬、がっくりきました。ところが、よくよく見てみると、タンクが空っぽになっていました。そう、ただのガス欠でした。給油して、もう一度スターターロープを引くと、エンジンは何事もなかったかのようにかかりました。その後、畦刈りを最後までやり切るまで、エンジンは当たり前のように動き続けてくれました。

 家に帰ってから、私は奥さんに言いました。「機械の修理ってさ、ソフトウェアのバグ取りと同じだな」  「怪しいところに当たりをつけて、そこを直してみて、ダメだったら次の怪しいところを探して、また直して…。その繰り返しだよな」と。
 奥さんは笑いながら言いました。「そうだね。昔はバグ取りをたくさんやったけど、ほんとそんな感じだったよね」
 そこで、ふと気づいたのです。「ん?これって、ソフトや機械だけの話じゃないかもしれないな」と。何かをやろうとしているときに、必ずと言っていいほど“障害”が出てきます。その障害の原因は何なのかを突き止めて、それに対策を講じて、うまくいったらそれでよし。ダメだったらまた別のどこがおかしいかを探して、そこに手を打つ。そうやって、やろうとしている何かに、少しずつ近づいていく。
 「世の中、みんなそんなもんなのかもしれないな」と私が言うと、奥さんは「そうだね。私たちも頑張らなきゃね」と静かに言いました。
 ホンダの草刈り機 UMK425の修理は、単なる機械いじりではありませんでした。燃料フィルタを疑い、点火プラグを疑い、キャブかコイルかで迷い、ケチの虫…倹約家の自分と相談しながらバッタもんコイルを選び、田んぼで何度も五分でエンストしながら、それでも少しずつ原因を絞り込んでいく。その過程そのものが、まるで人生の“バグ取り”のようでした。
 私たちの暮らしも、きっと同じです。うまくいかないことがあったら、その原因を探して、できる範囲で手を打ってみる。ダメだったら、また別のところを疑ってみる。そうやって、少しずつ前に進んでいく。そういうことなんでしょうね。

 はい、今回はいろいろ苦労しながらでも一歩一歩前進して行こう!というお話でした…あれ?そうだっけ、まあいいか。それでは次回も乞うご期待です。さようなら。

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