2025年2月10日週:壁を越えた瞬間

 みなさんこんにちは。雪、大変ですね。鳥取近辺では峠を越えたようですが、東北のでは〇㎝(センチ)ではなく〇m(メートル)という雪で、まだ大変さは続きそうですね。負けないで頑張ってください。
 峠は越えましたが、こちらも結構大変でした。まあ、雪は毎年この時期に振りますのでそれほど大変とは思いませんが・・・。ただある程度の雪が降ると途端に大変になります。それは何かというと、雪が積もると道路は大型除雪車によって雪掻きが行われるのですが、その除雪車が通った後は大きな雪だるまのような雪の塊がゴロンゴロンと道路わきに転がっています。
 経験のある方はよくご存じなのですが、この雪の塊が大変なのです。除雪車の下部分についている上下に湾曲した長い鉄の板(高さ1mくらいで長さは5mくらい)を先頭に向かって右から左に斜めに設置して、雪を道路中央から路側帯側というか歩道側にガガーっと掻き分けていきます。大きな刃のような形をした鉄の板を道路すれすれにして、そのままガガーッと走りますので、積もった雪はいったん道路から鉄の板の上側に滑り上がって、そのまま斜め左に向かってよけられていきます。イメージ的には大きなタンカーか大きな客船の先頭が波を左右にかき分けながら進んでいくあれの左側だけの感じです。そんな感じでガガーっと雪が丸まって道路から歩道や民家の車庫の入口にゴロンゴロンと置いていかれます。
 見た目は雪だるまですが、大きな重たい除雪車が道路上の雪を強引に押して丸めたものですのでとても硬くて重いです。特に寒い日などは氷のように固くなってしまって、普通の家の人が使っている除雪用の軽いスコップでは刃が立ちません。これが車庫の前にあるともう大変です。強引に行こうとすると車が凹んでしまいますし、かといってわきによけようとしてもまずこの雪の塊を壊さないといけません。出勤前に家族総出(とまでは行きませんが)で車庫の前の雪掻き・・というか除雪車の置き土産の雪の塊を壊してわきによける作業はこの時期の風物詩といってもいいくらいどこの家庭でもされています。
 ということで今回はこの除雪、雪掻きとも少し関係のあるお話をさせていただきたいと思います。

◆ある日の朝
 先日、時化(シケ)の影響で漁師さんが漁に出られず、市場での競りのない日がありました。その日は、競りがないためお客様への配達も鮮度を気にするようなものはなく、しかも配達時間はお昼前後で良かったため朝の時間帯は少し余裕がありました。
 外を見ると結構な雪が積もっていました。20㎝以上はあったと思います。道路側を見るとそれほど大きくはありませんが、雪だるまのような雪の塊が転がっています。雪掻きをしないと車が出られません。雪掻きが必要なのですが、どうせなら地区で持っている除雪機(除雪車のように人が乗って操作するのではなく手押し式で除雪していくあれです。操作には講習会受講が必要)を借りて、自分の家の前だけでなく小学校の子供さんが通る歩道もやってみようと思いました。雪が深いと歩きにくいですからね。
 地区の役員さんに電話してみると、使って良い・・・というかそれは助かるありがとう・・・とのことで除雪機を借りに行きました。除雪機は全体が赤く、黒いキャタピラで動くもので、そのキャタピラの上に大きな機械が載っていて、前側に大きな口を開けていました。後ろ側は棒状の2本のハンドルが付いていて、ハンドル前に操作盤が付いていました。前側の大きな口の中には鉄製の軸に直径40㎝くらいで、らせん状に巻きつけられた雪を砕くトゲトゲ装置が付いていました。万が一この中に手でも足でも入ったら一瞬で砕けて粉々になってしまいそうな、そんな威力を感じさせる回転装置でした。

◆除雪機の操作
 基本的な操作はそれほど難しくはありませんでした。以前講習会で習った通りにやればエンジンもかかりますし右にも左にも行かせることはできます。・・・ちょっと分かり難いですよね、キャタピラで動きますので車のようにカーブを緩やかに曲がるというイメージではなく、進みながら曲がりたい方向のキャタピラの動きを止めてその反対側のキャタピラを進ませて曲がりたい方向に車体の向きを変えるという感じです。極端に言うと左折の場合は交差点の真ん中に行ってからその場で左側に直角に向いて、その向きになってから前に進むということです。ですので、右に曲がるのではなく右に右折するという感じがぴったりです。
 いざスタートしてみると、想像していたものとは結構違いました。「こんなの簡単簡単」と思っていたのですが、なかなかどうして最初はうまくいきません。前進にセットしてキャタピラの操作レバーを触らなければまっすぐには行ってくれるのですが、雪掻きをするためには前側の大きな口の部分を路面に合わせてあげないと上手に雪を掻くことが出来ません。スピードも速いと上手に掻けません。あと、大きな口の中の雪搔き装置を駆動させるための装置用レバーを前に押し倒して「動作」にセットするのは良いのですが、除雪機が進むためのクラッチレバーを離すと、この装置用レバーが勝手に手前に戻ってきて、その戻ってきた装置用レバーが右手の甲に結構な勢いでぶつかってくるのです。これがまた痛いのなんのって。ちょっとずれて手の甲ではなく指にでも当たったら指が折れてしまいそうなくらい凄い勢いで戻ってきます。何度も何度も当たってしまい手の甲が痛くて堪りませんでした。

◆やってみると・・・
 私、この除雪機の操作を舐めていました。左右のキャタピラを停止、走行させれば直進も右折も左折もできることは理解していましたし講習会でもやってみて問題ありませんでした。前側の大きな口を開けた除雪部分も上下レバーを操作すれば雪を掻く深さも調節できることはわかっていましたし、これも講習会でやってみて問題ありませんでした。除雪機に煙突のようについている雪を飛ばす部分・・・シュートという名前だそうです・・・もシュート操作レバーで上下左右に向かって遠くに近くに右に左に雪を飛ばすことが出来ることも知っていました。やっぱりこれも講習会でやってその動きについてはわかっていました。
 除雪機についている全ての装置についてわかっているつもりでいました。因みに2024年7月のこのコラムに、自動車の中型免許の限定解除試験を教習所ではなく飛び込み受験して合格したことを書いたと思います。それとバイクの大型免許も持っていますし、大型バイクのレストア(修理修復)をして廃車同様のものを蘇らせたこともあります。そんなわけで機械に関することや操作は全く問題なくできると思っていました。
 ところがです。除雪機のような単純な構造でそれほど操作するレバーが多くなくてもなかなか上手に雪が掛けません。今回の除雪には2時間と30分かかったのですが、操作を理解して自分の思った通りに操れるようになり、思った通りに雪を掻けるようになったのは最後の30分くらいです。それまでは除雪機に、機械に操られていました。雪は掻けているのですが、思った通りにできません。

◆壁を越えた・・?
 除雪機を使い始めて2時間くらい経ってからでしょうか、何となくですが「雪を掻く深さを路面ギリギリにする場合は上下レバーの操作を左手中指でチョンチョンとやればいいんだ」とか、民家に雪を飛ばしてはいけない場合は道路側の大型除雪車が除雪した「雪の山(小さいですが山になっています)の上をめがけてシュート(雪飛ばし煙突)レバーを右手親指の付け根部分でクイックイッっとやればいいんだ」とか、目の前にある人力で除雪した雪の山を突破するには「上下レバーをあまり下げすぎないで、可能な限り微速前進でゆっくりゆっくり進めば突破できるんだ」ということに気付いて本当に上手に雪掻きをすることが出来るようになっていました。
 単に慣れということなのかもしれませんが、私にはこの除雪機に対する脳みその中での理解が深まった瞬間、ある境界線、壁?を越えた瞬間に「こうやればいいんだ」「あ、そういうことだったのか」となったような気がします。その境界線、壁を越える瞬間が作業を開始する前にわかっていればもっと上手にもっと早く雪掻きを終えることが出来たのかもしれません。勘の良い人はそういうことが出来るんでしょうね。私は凡人ですからなかなかできなかったということだと思います。まあ、この瞬間を味わうことが出来たことも今回の作業の収穫だったかもしれません。満足です。

 はい、ということで今回は日常の何気ない作業の中で何か新しい気付きをもらった瞬間について書いてみました・・・ほんとかな(笑)。
 それでは次回も乞うご期待です。さようなら。

 

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