2025年3月2日週:松葉ガニの食べ方 違いあり?

 みなさんこんにちは。岩手県の山火事は大変なことになっていますね。1200ヘクタール(ha)が消失してしまったそうです(2月28日の情報です)。1200 haという面積は物凄い面積です。東京ドームは4.7haだそうですので、東京ドーム255個分よりも多いということになります。うーん、ちょっと分かり難いですね。1200 haというのは平方キロに直すと12平方キロ(㎢)になります。これはだいたい東京都千代田区と同じくらいの面積と思ってもらえたらいいと思います。千代田区は11.66㎢ですのでそのくらいだと思います。
 東京駅とか国会議事堂とか、皇居がある江戸城のところとか靖国神社とかいろいろなものがある千代田区と同じ面積が数日で焼失してしまったということです。これは大変なことです。因みに、日本では毎年山火事は発生しているそうですが、1年間の焼失面積は700haだそうです。その1.5倍の面積が一瞬で焼失してしまったことになります。ニュースを観ていると避難された方がご自身のご自宅を見に行きたいけど行けない、燃えてなくなってしまうのだと思うと辛いとお話しされていました。永年住んでいた自分の家が、まだそこに建っているのに、まだ何ともないのに業火にさらされて燃えてしまう。お察しします、と簡単には言えない気持ちです。なんと言っていいのか本当に分かりません。でも、どうかお力落としの無いように、頑張ってください。

◆松葉ガニの食べ方
 と、こんな雰囲気の中で書き始めるのが少し憚られますが、今日は松葉ガニの食べ方について書いてみたいと思います。
 みなさん、カニ(面倒ですので松葉ガニではなくカニと書きます)はどうやって食べますか?・・・と聞かれて、「まずはカニの片方の指を手で持ってバキッと割って・・」と言える方はかなりのカニ通で、かなり丸茹で(姿茹で)のカニを食べ慣れた方だと思います。うちの店でもそうですが、通常カニはそのまま、カニの姿のまま茹でますので目の前にデデーンと置かれたカニを見るとどうやって食べるか悩んでしまうと思います。そりゃそうですよね、きれいに茹であがった松葉ガニは前から見ても後ろから見ても上から見ても、威風堂々とでもいうのでしょうか本当に格好いいですからね。少し変な例えになりますが、言ってみると可愛く綺麗にデコレーションされたケーキをどうやって食べようかと迷うのと同じような感じだと思います。
 でも食べる時は何でも同じで思い切りよく食べ易くするといいんですよね。カニの片方の指を手で持って、反対の手で甲羅のあたりを押さえて、思い切りよくバキッと割るんです。そうすると甲羅の中側のところにミソも少しくっついた状態で腹側の皮と身に指部分がつながった「肩」と呼ばれる形になります。ここの背中側(甲羅側)にはエラが付いていますのでこれを丁寧に取れば指と肩にぎっしりと詰まったカニの身を食べることができます。反対側も同様にすれば1枚(杯)分のすぐに食べられる状態になったカニの身が出来上がります。甲羅の中には程よい硬さになったミソが入っています。甲羅の中に入っているミソは勿論美味しいですが、ミソと一緒に入っている汁も美味しいです。何というのでしょうか、カニ独特の風味に少し塩味が効いていて口に入れるとフワッとカニの風味が口から鼻に抜けて、いいですよね。これもゴクゴク飲まないでチビリとすすっては熱燗のお猪口を口に入れると本当にお酒が美味しくなります。

◆都会の方は・・・
 地元の方の一般的な食べ方は、茹でたカニをその新鮮な状態・・・すでに絞めて茹でているわけですから新鮮という表現が当てはまるかどうか分かりませんが、兎に角茹でたてで湯気が立っているくらい新しい状態のものを、そのままバクバクを美味しく戴くわけです。
 指の部分ですと、ぎっしり身の詰まった松葉ガニではテレビでよく見かける指の殻を取って身だけでつるんとぶら下がっている状態にするのは不可能ですので、カニスプーンですくいだすとか、割りばし2本でギュッギュッと押し出すとかしてその身を戴きます。肩の部分(エラをとった部分の反対側)だと、層になっている殻の中に、これまたしっかりとした身が入っていますので、これをカニスプーンやお箸でこそぎだして戴きます。
 と、地元の方はここまでなのですが、都会の方、特に関西の方はカニの身やミソを食べた後に雑炊にするのがお好きだそうです。調理法もそれほど難しくなく、甲羅や殻、或いは甲羅の中にミソと一緒に入っている汁も鍋の中に入れてグツグツ煮だして出汁をとって、そこにご飯を入れて、ご飯にとろみがつくくらい煮たら雑炊用のタレを入れて、溶き卵を回し落としたら本当に美味しい雑炊が出来ます。
 うちでも試しにやってみたのですが本当に美味しかったです。タレの味にもひと工夫して、最後にわけぎを細かく刻んで振りかけて食べたらもう最高ですね。それとこれ、時間もそれほどかからないんです。カニは茹でてありますのでしっかり煮込まなくても食べられますし、何よりカニの出汁というのはすんなり殻から出てくれます。甲羅の中に入っている汁からも美味しい出汁も出ますし。ということで、この食べ方は、まさにカニを骨(殻)の髄までしゃぶりつくす料理です。

◆若松葉ガニはどう?
 若松葉ガニについて改めてここでご紹介する必要はないと思いますが、念のため少しだけ。
 若松葉ガニは松葉ガニが脱皮して半年以内のもののことを言います。松葉ガニになる一歩手前のものですので、松葉ガニほど身は詰まっていませんがその分みずみずしく、また、ほんのり甘みがあって美味しいです。そのため若松葉ガニのファンの方も多いです。
 この若松葉ガニの食べ方にも地元と都会の食べ方の違いがあります。都会の方は、若松葉ガニも松葉ガニと同じ受け止め方をされますので、松葉ガニと同じく、身もミソもしっかり美味しく召し上がられたうえで、松葉ガニと同じく出汁をとって雑炊や、何だったら鍋とかもされます。ところが、地元の方々は若松葉ガニは松葉ガニと違ってカニとして楽しむのではなく、若松葉ガニの身を楽しんでおられます。ミソなしの身だけを楽しんでおられます。
 どういうことかといいますと、うちのサイトにもありますし、ふるさと納税の返礼品にもありますが、若松葉ガニは姿茹でではなく肩茹でで販売されているのです。それは、若松葉ガニを松葉ガニのように1杯(枚)丸ごと茹でると、身が黒くなってしまい(地元ではミソが回るといいます)見た目があまり良くないからです。で、昔のカニ屋さんが「それだったらミソのある甲羅は最初から取っ払って肩と指だけで茹でちゃえ」と、若松葉の肩茹でというのが出来たのだと思います。
 この若松葉ガニを茹でる際に、当店ではその茹で方を工夫してミソが回らなくした商品を開発しました。「若松葉ガニの姿茹で」といいます・・・そのまんま(笑)。見た目もいいですし、味も美味しいです。きちんとミソもありますし。でもなぜか地元では売れません。見た目も良いし味も良いミソも美味しく食べられる、なのに売れない。・・・なんでかな?と考えました。最近その答えがやっと分かりました。
 地元の方は若松葉ガニは丸茹で(姿茹で)で食べるものではないと思っているのではないかと思います。若松葉ガニは肩で茹でて食べるものだからわざわざ丸茹でを買う必要はないと。で、なんでその答えが見つかったのかというと、試しに若松葉ガニの肩茹でにミソを付けてみたのです。勿論、ミソはきちんと食べられるように火を通したものです。そうしたら、結構評判が良いのです。肩茹での身だけのものでなくて、ミソ付きでも結構評判が良いのです。家内と二人で「なーんだ、やっぱりお客様は若松葉ガニでも身だけでなくミソも食べたいんだ」と二人で安心しあいました。やっぱりお客様は若松葉ガニでも松葉ガニと同じくカニとして楽しみたいんだなと。ただ、やっぱり都会の方と違って殻で出汁をとって雑炊にするなどということまではされないようですね。そこは地元と都会の食べ方の違いなんでしょうね。

 はい、ということで今回は地元と都会でのカニの食べ方の違いについて考えてみました。
 それでは次回も乞うご期待です。さようなら。

 

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